
「実践・ソフトウェアのISO9000」(日本能率協会マネジメントセンター:新倉忠隆著)の内容から抜粋しています.(1994年版のISO9001の解説です.出版当時のTickITにも対応しています.)
4.10 検査・試験
品質システム構築のポイント
- 組込型のプログラムは、PL訴訟の対象となりうるので、ソフトウェアの開発をISO9001の設計・開発と位置づけている場合であっても、テストの記録(設計検証の記録)は、品質記録として残すようにすべきである。
- 単体テストはチェックリストでテストを行って項目の横に完了マークを付けていくだけでよいとか、結合テストはテスト項目が多いので一覧表に記録していくとか、実効性のある方法を工夫するとよい。
- テストの手順では、以下を考慮するとよい。
- 準備の段階
- 品質計画を立案すること(4.2.3)
- テスト工程を計画すること(4.9)
- テスト仕様書を作成すること(4.4.5)
- テスト手順書を作成すること(4.10.1)
- 実施の段階
- テスト手順書に従ってテストを実施すること(4.10.3, 4.10.4)
- 合格か不合格かを記録すること(4.10.5)
- 不合格の場合に不適合品の管理の手順に従うこと(4.10.5)
- 記録には、次工程への引渡しに責任を持つ検査員を明確にすること(4.10.5)
- 評価の段階
- テストが計画した通りに完了していることを確認すること(4.10.5)
- ソフトウェア製品の受け入れ検査は、納品物の受領時に内容的な確認を行い、機能的な検証はソフトウェアの開発工程の中で行うようにするとよい。
- 二者間契約に基づくソフトウェアの開発の場合でも納品物を複製する工程があるが、複製の作業は、製造工程であり、複製作業が正しく完了していることの確認は、品質計画書又は手順書に基づいて行う必要がある。
審査に関連して
- 検査・試験の結果の記録では、予め決められた明確な合否判定基準に従って結果を記録することが要求されている。ソフトウェアの開発中に行うテストをISO9001の検査・試験の要求事項の対象とした場合であっても、コンピュータジョブの出力結果をすべて記録として保管することが要求されている訳ではなく、手順書に従って、合否を判定し、その結果を品質記録として管理することが要求されている。
- ソフトウェアの開発では、開発中にバグが検出されたとしてもバグのある部分を不適合品としないような作業のやり方を規定することができる。組織がソフトウェア開発において不適合品の管理を適用する基準を決めることができるため、審査員もそれに対応した審査をすることが要求されている。
2000年版では
1994年版の要求事項の内容が,2000年版では製造業以外の業種が考慮されて「製品の監視及び測定」として規定されている。大きな違いは、検査・試験の手順書の要求がなくなったことである。
1994年版では受入検査の要求事項があり、検査の対象には購入したものばかりでなく、他のプロセスや組織の他の事業所から搬入されたものも含まれていたが、2000年版では購入したもの以外に対する受入検査の要求事項はない。
以上
1995,2002 新倉忠隆