
「実践・ソフトウェアのISO9000」(日本能率協会マネジメントセンター:新倉忠隆著)の内容から抜粋しています.(1994年版のISO9001の解説です.出版当時のTickITにも対応しています.)
4.2 品質システム
品質システム構築のポイント
- 企業の一部や事業所の一部が品質システムを構築する際に,基本的には品質マニュアルを最上位においた文書の体系とするが,品質システムの適用範囲に含まれない部門が作成する文書を品質システムの文書として参照する場合には,内容に注意を払う必要がある.品質システムの外部で作られる文書は,往々にして記述されている通りに実施して証拠を残すことが難しかったり,適用範囲の全員に実施時期までに必要なことが知らされないといったことが起こるからである.そのような場合には,品質システムを構築し,維持していく責任部門から改善を要求していくことが重要である.
- ソフトウェアの開発や保守工程における作業を効果的に実施するということは,管理,実施,及び検証活動を効果的に行うということである.状況を管理するために手書きの一覧表を作成してもよいが,パソコンの安価なデータベースソフトや表計算ソフトなどを利用することを奨める.
- 文書化にあたって,品質マニュアルにはISO9001の要求事項全般をカバーして,条項の順に記述する.次に,実際のプロジェクトの活動のライフサイクルを意識して,品質マニュアルから参照するソフトウェア開発標準(ソフトウェア開発のための手順書)を作成する.更に,実際のプロジェクトでは,品質計画書や開発計画書などに品質をどのように作り込むかを計画する.また,そういった計画書が簡単に作成できるように文書のひな形を用意したり,品質記録の作成見本などを用意しておくことによって,実施しやすい品質システムとなる.
- 品質システムの用語が文書毎に異なることのないようにする.
審査に関連して
- 品質計画を立案しているか確かめるために「品質計画書があるか」と聞かれる場合があるかも知れないが,品質計画が記述されていれば手順書や他の計画書であってもよい.(正しい質問の仕方は「品質計画を記述したものはあるか」である.但し,審査員はいろいろな情報を得るための質問をすることがあり,監査テクニックの観点では特に問題ない.)
- どのような品質システムかを理解するためにライフサイクルプロセスの説明を求められることもある.
2000年版では
品質システム全体に関する要求事項や品質計画に関する要求事項はプロセスアプローチの考えのもとに大きく変わっている.従来は,品質マニュアルには文書の体系の概要を記述することが要求されていたが,そのような形式的な要求事項はなくなり,プロセス間の相互関係を記述するという,より実際的な要求事項となった.
以上
1995,2001 新倉忠隆