
「実践・ソフトウェアのISO9000」(日本能率協会マネジメントセンター:新倉忠隆著)の内容から抜粋しています.(1994年版のISO9001の解説です.出版当時のTickITにも対応しています.)
4.3 契約内容の確認
品質システム構築のポイント
- 受託ソフトウェアの開発では,仕様がなかなか確定せず,稼働予定日に全体ができていないということが起きることがある.このように仕様がなかなか決まらない場合には,仕様が決まる都度,その仕様での開発を請け負うことに関する内容の確認を行う必要がある.
- お客様によっては,お客様のソフトウェア開発標準に従って開発するように要求することもある.このような場合は,きちんとその内容の説明を受けた上で契約内容の確認を行うようにする.特に,使用する用語やライフサイクルプロセスが異なる場合には注意を払う必要がある.
- オンラインの受注システムを利用してシステムで注文のチェックを行い,受注内容もシステムに記録がとられている場合には,それを更に受注担当者が記録する必要はない.
- お客様との合同ミーティングなどでお客様の要求事項が確定し,合意するような場合には,その行為が契約に相当するという考え方ができる.
- 企画型の商品であるパッケージソフトウェアの場合,お客様からの注文は製品の数量や納期および納品場所などの情報が”契約内容”に相当する.
審査に関連して
- 実際の契約書や確認(レビュー)の記録を見られる.この記録の中に,レビューを行った者からのコメントが有った場合,コメントが適切に処理されていることが確認される.
- お客様の特別な要求(例えば,納期短縮)を受け入れて受注するようなケースがある場合には,そのような特別な要求に対して契約内容の確認の手順がどのようになっているかを確かめることがある.
2000年版では
大きく変わった点は,手順の文書化が要求事項ではなくなった点である.組織が必要としなければ手順の文書化は必要ないが,関連する要求事項は実質的に増えており,効果的な業務の実施のためにはある程度の手順の文書化は必要であろう.
従来から,TickITの審査では,契約内容の確認の記録の内容に踏み込んで監査が行われることがあった.ISO9001の2000年版では,”製品に関連する要求事項のレビュー”の記録に,レビューを受けてとられた処置の記録が要求されており,TickITでなくてもお客様の要求するものを確実に提供できるように組織が活動していることが確認されることになったといえる.
2000年版では,お客様への製品情報の提供や引き合いに関するお客様とのやりとり,およびお客様からのフィードバックなどに関しても効果的な方法を明確にして実施することが要求されている.これは,1994年版にはなかった要求事項である.
以上
1995,2001 新倉忠隆