ここでは,2000年版のISO9001で明確な要求事項となった顧客の知的所有権の保護に関してのヒントを提供します.(但し,知的所有権だけが新たに追加されたのではなくて知的所有権は顧客の財産の例として取り上げられています.)
お客様の機密情報は知的所有権?
機密情報は知的所有権か?
結論から先に言えば,お客様の機密情報は2000年版ISO9001で注意を払うべきことや保護・防護すべきこととして要求されている顧客所有物であり,知的所有権に該当します.
知的所有権とは
知的財産権とか無体財産権ともいい,無形のものが権利の対象になっています.知的所有権には,@発明に関する特許権,A考案に関する実用新案権,B意匠に関する意匠権,C商標に関する商標権(これらの@からCを工業所有権といい,特許庁が管轄しています),D著作物に関する著作権,E営業秘密,F植物新品種及びG半導体集積回路等が含まれています.
この中で,営業秘密はお客様の機密情報に最も関係しています.これらの内,著作物に関する著作権は,著作と同時に権利が発生し,届出は必要ありません.同様に,営業秘密も届出は必要ありません.この2つ以外は,所管の官庁に登録することによって権利が発生します.
所管の官庁への登録を必要としない「著作物に関する著作権」と「営業秘密」では,前者は,公開されることによって権利が発生しますが,後者は基本的に秘密として管理していることによって法律による保護の対象になります.
営業秘密とは
営業秘密は不正競争防止法によって保護されますが,そのためには幾つかの条件があります.それは次のようなものです.
たとえば,外部からの保険の外交員がオフィスにやってきて,興味本位でいつでも閲覧できてしまうような資料は営業秘密としての管理がされていないことになります.また,機密資料や社外秘の資料を一般のゴミと同じゴミ箱に捨ててしまっているような場合も,秘密として管理がされていないことになるでしょう.
営業秘密の例
前述の条件に該当する以下のようなものが営業秘密に該当します.
機密情報の管理
言葉は違いますが,顧客企業が機密情報といった場合には,上記の営業秘密のどれかに相当するのではないでしょうか.顧客の営業秘密を提供された場合に,組織が重大な過失によりその営業秘密を開示してしまったような場合には,損害賠償の対象になります.従って,顧客から機密として提供された情報は単に注意を払うだけではなく,上記のような営業秘密としての管理が必要になるということを理解しておく必要があるでしょう.
以上
2001 新倉忠隆
2001 新倉システムコンサルティング