作業やプロジェクトの進捗管理はどのように定義すればよいか.

解説
1994年版のISO9001では,特に開発作業については,進捗を管理していなくても結果として計画した作業を行っていればよく,進捗管理をどのように行っているかということはあまり話題になることはありませんでした.しかしながら,2000年版では,以下のような要求事項が品質マネジメントシステム全体に関するものとして規定されています.

4.1 (品質マネジメントシステム)一般
 組織は,この規格の要求事項に従って,品質マネジメントシステムを確立し,文書化し,実施し,かつ,維持すること.・・・中略・・・
c)これらのプロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするために必要な判断基準及び方法を明確にする.
f) これらのプロセスについて,計画どおりの結果が得られるように,かつ,継続的改善を達成するために必要な処置をとる.

この要求事項は品質マネジメントシステム全体にかかっていますから,どのプロセスであれ,プロセスが効果的に運営管理できるように必要な基準を設けて,かつ,計画したとおりになるように必要な処置をとることを要求しているわけです.
 では,具体的にはどこに定義すればよいでしょうか.以下に,規格の要求事項に対応させて品質マニュアルに定義する場合の記述例を示します.

設計・開発作業を特に管理したい場合

 「7.3.1 設計・開発の計画」では,「製品の設計・開発の計画を策定し,管理すること」が要求されています.まさしく開発を管理することが要求されているわけです.従って,4.1 c)及びf)の要求事項を考慮して以下のように定義することができます.
定義例:
 サービスの設計・開発(or プロジェクト)の責任者は,設計・開発の計画を策定すると共に,作業の実施及び管理が効果的に実施できるように,作業の進捗状況を評価するための指標を明確にし,作業が計画どおりに進行するように管理する.

製品実現のプロセス全体の作業の進捗を管理することを明確にしたい場合.

 「8.2.3 プロセスの監視及び測定」では,「品質マネジメントシステムのプロセスを適切な方法で監視し,適用可能な場合には,測定をすること」が要求されています.製造業において製品の製造ラインの生産能力や不良品の発生率などを管理したりする活動は,これに該当します.ただし,対象となるプロセスは,4.1の要求事項にあるように,製造プロセスだけではありません.このような要求事項を考慮して以下のように定義することができます.
定義例:
 サービスの設計・開発及びサービスの実施の責任者(or プロジェクトの責任者)は,作業の進捗状況を評価するための指標を明確にし,それを用いて作業の進捗の実績を評価し,計画どおりに作業が行われるように適切な処置をとる.

第三者審査では

8.2.3 では,プロセスが計画どおりの結果を達成する能力があることを実証できるような形でのプロセスの監視及び測定が要求されています.監視及び測定の対象とするプロセスの要素は品質,予算,時間等いろいろありますが,1994年版の審査と比べて,様々な点で,計画どおりに進んでいることを確実にする活動(たとえば進捗管理)が行われていることが確認されるようになるでしょう.

以上